かなり前の事ですが、一回り年下の友人から「この人なら大丈夫」と体力と根性を買われ、
誘われるままに(あまり考えもせず)富士登山に挑戦。
もちろん登山は未経験で、ピッケル、登山靴、防寒防水コートも初購入。
休みが取れず、土日で(無泊2日)という超強行軍。
福岡空港から朝一便で名古屋へ。
そこからはバスで長野経由で富士山まで。
この時既に夕方。
御来光に合わせるため、すぐ登山開始。
富士山の頂上は秋になると雪が積もるので、登山ができるのは夏の限られた期間だけです。
おまけに土日は特に人が集中し、山頂へと向う道は途方もなく長いアリの行列。
或いは帰省ラッシュ時の高速道路にずらーっと並んで止まっている車を
人に置き換えてもらってもいいと思います。
登ること自体は想像していたより大したことなかったのですが、
人の渋滞で流れが止まってしまうことが辛かったですね。
真夏とはいえ夜中だし気温は零度近く。
冬場でもこんなに着込まないというくらい厚着をしていても、
立ち止まると途端に冷えてきます。
中々先に進めないというのも精神的に辛いものです。
結局八合目の仮眠小屋に着いた時には予定より何時間も遅れ、
おまけに全く知らない人たちとギュウギュウ詰めで横になることもためらわれ、
どちらにしても時間も余りなく、友人も私も一睡もせず再び行列の中へ。
強硬スケジュールだったせいか、このツアー参加者の殆どが20~30代。
ガイドさんの適切なアドバイスもあり、八合目小屋で数人の年配者の方がリタイアした他は
全員が高山病にもかからず山頂を目指しました。
途中、友人の具合が急に悪くなり、「もう駄目だ」というので少し休み
持っていたカロリーメイトを食べさせたところ、いきなり別人のように復活!
単なる電池切れだったようです。
人間の体って正直なのねえ。
天の川が本当に川のように流れていることも
星が一晩の間にあんなにたくさん降っていることも
いくつもの町の花火を同時に見ることができることも
初めて知りました。
それまで楽勝だと思っていた道が九合目くらいから急に厳しくなってきます。
山頂は何となく見えるのに、登っても登っても先に進んだように感じられなくて
疲れがどんどんたまってくる。
足場も更に悪くなってズルズル滑るし。
そうこうしているうちに日の出の時間が近づいてくるし。
そして、やっとやっと鳥居の傍まで辿り着いた時、
すぐそこまで夜明けが来ていました。
落ち着いて座れる場所を確保し、オレンジの頭が地平線の向こうから現れるのを待ちました。
なーんだかね。
昨日の事とか、明日の事とか、どーでもよくなりますよ。
ほんの一瞬にしたってね。
お楽しみが終わった後の下山の辛さは登りの10倍。
ひたすら何時間も黙々と足を滑らせるだけです。
何度、歩くのをやめたいと思ったことか。
心の中は大泣き状態。
泣いても下りなきゃいけないのがまた悲しい。
帰りのバスの中でふと目が覚めた時、
みんな息をしてないのかと思ったくらい、全員石のように眠っていました。
あんなに物音ひとつしない乗物に乗ったのは、後にも先にもその時だけです。
わざわざ買った登山用具一式はこの一回しか使わず今は押入れに冬眠中。
別に登山が好きというわけではないのです。
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