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日々の雑感を写真と共に

花守り  

去年の桜


1月21日、旧西鉄香椎駅前にあった桜の木が新駅舎前に移植されました。
福岡県出身作家、松本清張の代表作「点と線」で重要なシーンが描かれているため
香椎は清張ファンにとって思い入れの強い場所です。

西鉄香椎駅.jpg
(旧西鉄香椎駅と工事中の新駅)

小説には桜の木は出てこないのですが、ゆかりの駅に古くからある桜ということで
大切にされてきました。
このあたりは大規模な区画整理事業が進められ
旧駅舎の解体と合わせて桜も伐採される予定でしたが、
それを知った市民が駅舎はなくなってもせめて桜だけはと嘆願し
一本の桜の老木だけは生き残ることになったのです。
この桜、私が子供の頃から見慣れた風景の一部になっていたのですが
残念ながら風情ある駅舎の写真は撮っていませんでした。

旧西鉄香椎駅
(旧西鉄香椎駅)

このことで思い出したのが、福岡市民には有名な「桧原(ひばる)桜」の話です。
もう20年以上前のこと、
福岡市南部の桧原で、道路拡幅工事で伐採されることになった開花前の桜の木に
心を痛めた市民が1首の短歌を吊るしました。

「花あわれ せめてはあと二旬 ついの開花をゆるし給え」

これが新聞で報道されるがいなや、桜を惜しむ市民の短歌が次々と桜の枝に吊るされ、
その中に混じって当時の福岡市長の返歌もありました。

「桜花惜しむ 大和心のうるわしや とわに匂わん花の心は」

結局、最初の計画は変更、道路は蛇行して作られ桜は残されることになったのです。

どちらの件も、もう役所で決まったことだからと工事を無理矢理にでも押し通すこともできたはず。
それを情で動かすことができた・動かされたというのはなかなかないことです。
桜の木に特別な力が宿っているのか、
あるいは私達が桜の木を想う時に起こる不思議な力を感じずにはいられません。




category: 福岡

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コメント

私の住む茅ヶ崎も昔の駅舎は取り壊されて、駅ビルになっています。
去年、昔から走っていたオレンジと緑の
「湘南電車」が引退するという事で、始めて鉄子しましたが、
昔の駅舎も撮っておきたかったなぁと改めて思いました。

一首の短歌がきっかけになって桜を救ったという話は、
以前私も新聞で読みました。福岡のお話だったんですね。
桜の季節になると落ち着かなくなります。

ヒツジ草 #nKD1BgzM | URL
2008/01/26 08:57 | edit

とてもすばらしい話ですね!

東京の国立のすばらしい駅舎もつい昨年あたり
にこわされてしまいました。
近郊住民みんなから愛されていただけでなく
西東京のシンボル的存在だった駅舎が
なくなってしまったことにひどく悲しい気持ち
になりました。
新しくできる便利だけども醜い駅舎は
優美な国立の街の魅力を薄くしてしまうことでしょう。

この桜の話のように
もっと福岡のひとをみならうべきですよね。
できそうでなかなかできない事ですよね。

なな #- | URL
2008/01/26 10:06 | edit

「桜と日本人」って、他に何にもたとえられない絆みたいなものがあるように感じます。
DNAに組み込まれているような。
naomiさんおっしゃるように、桜の木には特別な力が宿っているのでしょうね。
西行が桜の歌をたくさん残しているように。

「桧原桜」は、うちから歩いて10分くらいの所にあります。
市民と市長の歌詠み以来、桜の花が咲き始めると、短歌が吊るされる光景が常となっています。
桜、短歌、と 日本のこころに響く情景だな~と思います。

naomiさん、今年もまた城内の桜の写真、たのしみにしています~

akiyasu_sukiyasu #TJwWj8Lg | URL
2008/01/27 11:44 | edit

ヒツジ草さん、
湘南電車の引退の時の写真は、他の方のブログでいくつか見たことを思い出しました。
電車そのものよりも、それを撮っている人たちの数にびっくり!
あの熱気の中にヒツジ草さんもいたんですねw
私も二枚目の写真は、カーブのところがちょっと鉄子気分です。
旧駅舎は小さくてバス停まであったので、人がいつも外に向かって立っていて撮りづらかったのです・・・
でもなくなってから、やっぱり、と思っちゃうんですよねぇ。
桧原桜の話はご存じだったんですね。そうなんです。福岡のことだったんですよ。
もうそろそろ緋寒桜の蕾が膨らみだしましたネ^^

nao #3un.pJ2M | URL
2008/01/27 22:45 | edit

ななさん、
桧原桜の話は風流美談としてわりと知られられているようです。
長い間詠み人知らずでしたが、何年か後に御本人が本を出されたりもしました。
あれから20年以上も経った今は手続きが厳しくなったりしているので、もうこういうことは無理かもしれません。
だからこそ話が残るのでしょうね。
そちら方面の定宿になってる国立市の友人が保存運動をしてたので駅舎のことはよく知ってますし、私もあの駅舎は大好きでした。
大学通りの高層マンションの件もそうですが、自分達の町に対する愛着はとても強いようですね。
だからなのか、あの町はとても落ち着く場所なんですよ。駅舎は残念でしたが・・・

nao #3un.pJ2M | URL
2008/01/27 22:47 | edit

akiyasu_sukiyasuさん、
「菊と刀」じゃないけれど、「桜と日本」と書くだけで立派なレポートのタイトルになりそうですね。
桜に対する想いが別の人の感性に移り、広まり、ということを千年、二千年前から延々と繋げていて今の私達にまで届いていると思ったら凄いロマンじゃない?
面白いことに中国の古い詩では桜ではなく桃や李(すもも)がよく出てくるのですよ。桃李でセットです。
桜というのは「過去」を振り返させる不思議な言葉でもあると思います。未来ではなくてね。
その過去の扱い・考え方に日本的な要素があって、それが<桜=はかなさ、一瞬の華やかさ>と結び付けられるのかなぁ。
そういう私も過去の記憶と桜は切り離せないものなので、やっぱ日本人やね~ となるのです。

nao #3un.pJ2M | URL
2008/01/27 22:51 | edit

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