Somewhere Anywhere
日々の雑感を写真と共に
渡り歩く本 
2008/07/17 Thu. 00:02 [edit]

ブックオフで丸谷才一の「日本語のために」を買ったら、所々に黒のマジックで丁寧に波線が引いてありました。
しばらく読んでいると、今度は赤の色鉛筆でさっと引かれた直線が。
着目点が違うので、多分別々の人が引いたのだと思います。

この本の発行は昭和53年。
平成20年の今まで、何人の人の手を渡ってきたのか分りませんが、最初に線を引いたのは黒の波線の人だったのかしら。
文献にチェックが多く入っているので、もしかしたら国語教育に携わっていたのかもしれません。
その後、赤鉛筆の人がこの本を手に入れ、自分もラインを加えたのでは、などと想像が膨らみます。
私も少しだけラインを入れてみたのですが、本は汚さないように読む習慣があるので、黒マジックの人のように大胆に書き入れることができませんでした。
この古本にこれだけ執着する訳は、一か月前に読んだ沢木耕太郎の「地図を燃やす」の中にあります。
「地図を燃やす」の一番最初に「書物の漂流」という章があります。
ヨーロッパやアフリカを渡り歩いたある日本人が、一番熱く読んだ本は山本周五郎と司馬遼太郎だという話を沢木さんは笑って聞き流しました。
その数年後、シルクロードを歩いていた沢木さんは中近東の町ですれ違った日本人に山本周五郎の「さぶ」を貰い、一行目を読んだ途端、涙がこぼれそうになったといいます。
沢木さんが読んだ後、「さぶ」は再び別の旅人の手に渡ります。
他にも松本清張や司馬遼太郎の本がシルクロードを行ったり来たりしているということです。
そんな熱い想いがこもった「さぶ」には到底届きませんが、熱心に読み込まれた感がある「ラインがある本」を、このまま手元に置くことをせず再度旅に出し、別の本好きさんに買ってもらうというのもなかなかロマンがあっていいのではないか
と、ひとり悦に入っているのでございます。

あまりにもそっけない写真ばかりだったので・・・
category: 本
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懐メロ »
コメント
こんばんわ
たしかに古本屋でたまにラインがひいてある本にであいますね!
僕もその箇所は思い入れがあったんだろうなと注目してしまいます。(笑)
感動した文章に出会うと自分でもラインをいれようと思うのですが
いつもそんな時に限ってペンをもっていません。(笑)
ぼくがもっているカメラは中古ばかりなので
カメラやレンズにたいしていつもノスタルジックな思いをしてしまいます。
最後のお写真 能古の島でしょうか?
なな #- | URL
2008/07/17 21:32 | edit
ななさん、
数年前、三色ボールペンで本を読むというのが流行ったのを覚えていますか?
引きながら読んだ方が頭に入るような気はするのですけど
三色も使ったら本が汚なくなってしまうのでなかなかできないなぁ。
ななさんがおっしゃる通り、古いカメラやレンズも何人もの手を渡り歩いて
それこそ海外の知らない場所を撮っていたかもしれないのですよね。
歴代の持主の名前や住んでいる町の名前など、日本語やドイツ語やロシア語や… 色々入っていたら面白いかもしれませんね。
能古島の写真、よくお分かりになりましたね!! スゴーイ!
以前も同じ場所から撮ったのを載せましたが、これは違う日に撮ったものです、一応。(笑
naomi #3un.pJ2M | URL
2008/07/18 23:30 | edit
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