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Somewhere Anywhere

日々の雑感を写真と共に

今月の一冊  

「唐詩選」 より 
  張若虚 『春江花月夜』

090228.jpg
書展に出した詩文です。
「春江花月夜」からの一部抜粋。

白雲一片去悠悠
 青楓浦上不勝愁
誰家今夜扁舟子
 何処相思明月楼
可憐樓上月徘徊
 應照離人粧鏡台
玉戸簾中巻不去
 擣衣砧上拂還来
此時相望不相聞
 願遂月華流照君
鴻雁長飛光不度
 魚龍潜躍水成文

ひとひらの白雲が遥か彼方へ去りゆくのを見るにつけて、
私は青い楓の茂る入江のほとりで耐えがたい郷愁を抱く。
今宵、小舟を浮かべている旅人は誰であろうか。
明月に照らされたどこかの楼の上には
遠く旅立った恋人を慕う女性の嘆きがあるのではないか。
ああ、その楼の上には月の光がきらめいている。
光は恋人と別れた女性の化粧台を照らしているに違いない。
玉で作った扉から、簾の間から、差し込む月光のやるせなさに
彼女はそれを簾に巻きこもうとするけれど、光はやはり去らない。
恋人の着物を打つ砧の上に、払らっても払らっても月影はまた忍び寄る。
今このとき、月を望んで遥かな人を慕っても、便りを聞くすべもない。
月の光のあとを追い、共に流れて恋しいあなたを照らしたいものを。
けれど雁の列が長くわたって、月の光も途絶える。
魚も竜も水底深くおどって、水面には波紋が広がるばかり。



*前野直彬さん注釈による岩波文庫「唐詩選(上)」から引用

category: 書展

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コメント

ん~
泣けるぜぇ…

満月 #- | URL
2009/03/01 10:28 | edit

満月さん、
漢字ばっかりで硬い詩ばかりかと思いきや、
実は悲喜こもごもな詩も多いのです。
漢字が書ける、詩が読めるというのは高級官僚だということでして
政治がらみの色々があるのはいつの時代も一緒ですね。
付いている人が失脚すれば、遠くに流されれたり幽閉されたり一族が殺されたり…
悲喜こもごもこもごもです。
流されるのも日本と違って中国は広いですし。
「夏草や兵どもが夢のあと」的な詩が多いのも納得です。

naomi #3un.pJ2M | URL
2009/03/01 23:39 | edit

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