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Somewhere Anywhere

日々の雑感を写真と共に

ノマディック美術館  

nomadicmuse.jpg

「Ashes and Snow」  グレゴリー・コルベール

その建物の中に足を踏み入れた途端、鳥肌が立った。
瞬間、聖堂だと思った。
今さらノマディック美術館がどういうものか説明する必要もないでしょう。
Nomadic、旅する美術館。
単に場所の移動を指しているだけではなく、見る者を時間の漂流へと導きます。

通路の両側に吊り下げられた写真の間を通っていくと、その奥はまるで祭壇。
そこに写っているものは祈りの風景のように穏やかで、
人は動物たちに寄り添い、目を閉じ、何かを聞こうとしているよう。
そして多分、その祈りは自分の為でも誰かの為でもない、目的を持たない祈り。

この回廊に置かれた写真は ashes and snow の一部にすぎません。
特筆すべきは、一時間にわたる映像。
数百人収容の映画館のスクリーン程の大きさの幕に映し出される
夢とも現実ともつかない映像の前で、
初めはざわついていた観客もそのうち全員が背もたれのないスツールの上で
微動だにせずスクリーンを食い入るように見つめているのです。

美しい映像は、小説の形を借りて進んでいきます。

  昔々、空を飛んでいた象は自分の重さに耐えられず、地上に落ちた
  取れた羽の上に雪が積もりヒマラヤになる
  地上の象の中には水中で生活を始めるものも現れた・・・


水中で体を丸めている男は羊水の中の胎児にそっくり。
胎児はその10ヶ月の間に、何億年もの地球の歴史を体現するという。
水中の無脊椎動物から魚類、両生類、更には地上に這い出て四足で歩き、二足歩行になり、
幾種もの生物が絶滅するような天変地異が起こる。
その壮絶な体験の末この世に出、大声で泣き、記憶を捨てていく。

水中の男と女は、私たち祖先の記憶を表してないだろうか。

何十頭もの象の間で踊る女。
横たわった象の足の上で寝る少女。
カラカルを抱きしめる老女。
チーターの上を少年が飛び越え、少年の上をチーターがまたぐ。

本当にこれは現実の世界なのだろうか。
私たちそれぞれのスクリーンに投影された夢かもしれない。
ノマディック美術館は限りないイマジネーションの海へ私たちを連れ出してくれる。

15年目のこの場所はひとつの通過点。
ノマド・グレゴリーの旅はまだまだ続いています。

http://www.ashesandsnow.org/

category: 写真・アート

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